インク止め式の巨大なる万年筆に就いてー初代のPILOTの「漆」モデルに就き語るー
元來インク止め式と云う吸入方式は万年筆の本格性の上でより望ましい部分を持って居る。
即ち長時間筆記すると云う点でカートリッジやコンバーターのインク容量を凌ぐからこそより有利となるのである。
ところが特に古いインク止め式の場合はコルクなどの劣化により万年筆として使えなくなることが多くつまりは定期的なメンテナンスが必要不可欠となるが故に其れこそ「整備が難しく扱いにくい筆」とならざるを得ぬ。
要するに其処で行われる「合理化」の様がアナログ的なので現代の合理的筆記にはそぐわないのである。
對してカートリッジやコンバーター化ー所謂両用式としてーされた現代の万年筆ではインク容量がそも減らされて居る訳なので壱般人に取っては気にならずとも其れこそ澤山文字を書き連ねる必要のある人人に取り物足りないものとならざるを得ない。ー概ね本格性に欠けるー
またインクの保持の容量が小さいと基本的にインクフロー(インクの流れ)が良いものとはなりにくい。
其れでもインクの流れの良い現代の万年筆があるにせよあくまで其れは個體的な具合の良さと云うことにならざるを得ない。
以上のことより万年筆に本格性を求める限りは「インクの保持容量」の部分をこそまずは問題として捉えて行かねばなるまい。
其れに對し主に独逸の万年筆は「ピストン・フィラー」との解をかって得たのだった。
其の「ピストン・フィラー」は確かに優れて居り最もまともな部類でのインク供給のシステムかとも考えられるのだが但し其れもまた完全なのでは無い。
「ピストン・フィラー」は「インク止め式」よりもインク容量が若干減るのだし其の機構が複雑なので案外壊れたりもまたするのだから。
實際に伊太利亜の現代の万年筆にも「ピストン・フィラー」のものが結構有るがまずは拾年程で壊れたりもする。
特に90年代製のモンテグラッパやスティピユラなどの所謂「ピストン・フィラー」の作りの様は酷い。
故に「ピストン・フィラー」もまた完全では無くおそらくは日本製の「ピストン・フィラー」ならばむしろ其れが壱番なのだらう。
兎に角イタリアンは藝術的意匠には強いが工業製品としてはまず弐流なのでよってあまりホイホイと飛び付かぬ方が賢明なのだ。
但しわたくしに限りかってむしろ其れ等にホイホイと飛び付いて居たのだった。
イタリアンの🖊はもうどうしやうもなく魅惑的なのでさうしてついついホイホイと飛び付いて仕舞うのである。
ところが美しいものには棘、ばかりか毒、までもがありそいでもって其の棘に刺されしかも其処から全身に毒が回りもうほとんど生きるか死ぬかの態でもって其れ等のヤバい伊太利亜の美女達と付き合って居たのである。
對して独逸物は概して眞面目ながら其れでも「限定品」に於いてはまた戦前物に関しては其ればかりでも無くつまりは面白みなどもあるので案外独逸物の其れも限定万年筆などは良いと思うのである。ー但し90年代物に限るがー
イタリアンの🖊は限定品、主流品を問わずに兎に角🖋としての基本の部分がすぐに壊れるので非常に怖いのである。ー特に90年代物はー
ところがまた其の壊れるやうな🖊に限り何故か怪しい魅力を周りに振り撒くのであった。
片や🗾の万年筆はクソ眞面目で壊れないが余り面白くは無くでも其の部分を90年代に各社があえて解放しつつやって居たので当時の限定品もまたなかなか面白いのである。
其の吸入方式の変遷に就いては其れこそ戦前にはあるとあらゆる方式が考案され且つ其れが試され生き残るものと滅びるものとが分けられて行った。
ところがまずは其処に於いて最も難しいことが、
インクの制御⇔インク出の良さ
との所謂弐項對立の部分であったのだと言える。
即ちインクを制御すればする程にインクの保持容量が小さくなりインクの出は惡くなりがちなのだ。
かって我が國のインク止め式では携帯時に完全にインク補給の通り道を塞ぎ使用時に其れを段階的に開放することで其の両立をこそ図った訳なのだった。
まさに其れは独逸人ですら為し得なかったある意味では「超合理的」なシステムである。
ところが其のこともまた当時の素材其のものに難があり完璧にはなり得なんだのだった。
故に其れこそ古いインク止め式の萬年筆は整備せぬ限り其の侭では使えぬ物が多い。
但し其れもまた机上限定での「アイ・ドロッパー」として使えばむしろ何ら問題は無いのである。
要は其の考え方壱つなのだ。
自分の場合は何せ合理主義者なので万年筆を机上以外で使うことがまず無い。
机上以外で使う筆記具はボールペンか又はシャーペン若しくは芯ホルダーでこと足りる訳です。
但し山の中で🖋でもって長文などを書く場合にはカートリッジを挿した日本の万年筆を持って行けばほぼ万全でせう。
どだいそんな山の中へ大事な独逸物や壊れ易い伊太利亜物を持って行くこと自體がオカシイ訳です。
ですがこと机上ではそんな吸入方式には捉われずに兎に角面白い万年筆を選び使って行く訳だ。
所謂「趣味性」が高くある🖋を好んで使う訳です。
其の「趣味性」との観点から言えば最終的には吸入方式なんぞはなんでも良いことになりませう。
どだい自分の場合は「dip pen」の使い手でもまたありよって万年筆の場合でもさうdip pen化して使う場合が多くと言うことは吸入方式のことなんぞはむしろどーでも良いのであります。
其れよりも何より、
1.金ペン先が強くキレを有すること
2.軸がエボナイトか又はセルロイドでもって感触や色合いに優れること
3.軸が長いこと
との点の方があくまで自分に取っては大事なこととなる。
要するに机上筆記限定ですので其処に「趣味性」の部分こそが強く追及されるのです。
が、さうした意味での少少外れた🖋観なのではあれ大きく評価し得る吸入方式と云うものがまた御座ります。
5.Jinhao9019の回転式の大容量コンバーター
此の弐つに限り頗る優秀です。
特にJinhaoの大容量コンバーターは脅威であると同時にまさに「目から鱗が落ちる」思いがした。
何故コレを利口な独逸や🗾のメーカーが創れなかったのか。
尤もプラチナ万年筆は60年代後半に其の大容量カートリッジをすでに實用化させても居た。
其れは巨大なカートリッジでわたくしもかって文具店で発掘し持って居ますが最近行方不明となりとりあえずは探さないと出ては來ない。
では靑軸と黑軸の弐本のJinhao9019をたった今使ってみます。
勿論スッと書ける。
さらにインクフローが良く書き心地に優れる。
また其れが「ピストン・フィラー」などよりも樂に使える。
とのことでJinhao9019を世界壱の廉価万年筆へと押し上げて居るのがまさに此の大容量コンバーターシステムです。
尚其のJinhao9019は只のアクリル系の軸の廉価万年筆ですが其の書き心地の方こそが左様に素晴らしいものへと仕上がって居る。
さてパイロットが開発したプッシュ式の大容量コンバーターなどもまた戦後最も良い部類での吸入機構となることでせう。
實際出來得ればコレをプラチナ万年筆の方にも付けたい程です。
いずれにせよ現代に於ける万年筆は所謂「實用性」ばかりでは無くむしろ「趣味性」の高さの方へと選択のウェートが移って來て居るものとなる。
故に、
實用性⇔趣味性
との弐項對立に於いてむしろドッチも高められて行かねばならんのですが實は「本格性」の面からすればむしろ其れが落ちて行って居ると云うのが正直なところなのだらう。
主流⇔傍流
なんとなればもはや万年筆は主流の筆記具では無くあくまで筆記具の傍流としての趣味の物なのだ。
其れもかっては万年筆しか書けるものが無くよってみんなが万年筆を使ったが今やまるでさうでは無いのですから。
うーん、しかしながら此の弐本のJinhao9019は凄い。
でもってデカいので兎に角目立ちますわな。
尤も「SUN STAR」の方がよりデカいのではありますが。
うーん、「SUN STAR」の使用感とさほど變わらんぞ、コレ。
兎に角中華万年筆の思想面にやられる可能性などもまた高く出て参りました。
其れもこんな中華革命思想が万年筆の先進國を蹴散らしアノ台湾迄をも属國にしやうとさえしておるのだ。
ですが中華万年筆にとりあえず「蒔絵物」は無い。
いえ正確には螺鈿蒔絵物も有りますのですがとりあえず「繪物語り」を描くやうな蒔絵の技法は無い。
でも「繪」などは要らんのでせう?
さうですね、「繪」が有ると逆に筆記ははかどりません。
さて其の吸入方式でもって最も確實で且つ信頼し得るのはむしろ「アイ・ドロッパー」ー点眼式ーです。
但し現代の万年筆の愛好家は其れを余り使ったことが無くむしろ其れを怖がっても居ることでせう。
ですが其の「アイ・ドロッパー」ー点眼式ーの使い手として申せば「アイ・ドロッパー」こそがむしろサイコーのインク供給システムなんです。
其の代わりにあれこれとまたある訳です。
要するに「生もの」系でのものでどちらかと言えば🐈や🐕を飼うのがまた實に大變ながらまさに其れにも近くなることだらう厄介さが常に出て來る。
6.インクで手が染まることが兎に角多い
7.夏場はインクがダダ洩れたりもまたする
8.其の代わりに常に快適に書ける
まあそんなものです。
つまるところ其れは「生き物」です。
其れも万年筆では無くまさにドーブツなんです!
そんなドーブツだから常に愛情を持って接しつまりは「育て」且つ「慈しむ」ものです。
また其れは「気紛れ」ですらある。
「気紛れ」ではあれ其の筆記感は概ね優れて居る。
要するに扱い辛い筆ですので變わった筆記者に向いた万年筆なんだらう。
尚「アナログ」での筆記とは最終的には其の種の非合理性の部分をも内包して行くものです。
また故にこそ其処に「深い愛着」の部分が生じて参ります。
例えば機械式の腕時計をこよなく愛する愛好家が世に居られるやうに此処万年筆の世界に於いても左様な「アナログ」の部分に特化するかのやうな万年筆の使い方がしかとある。
ですが其の種の🖋は百貨店や丸善さらに伊東屋などにはまず置いてありません。
百貨店や丸善や伊東屋は要するに文明圏ですのでそんな動物の同伴はむしろ断られて当然のことでせう。
そんな動物の世界はしかしながら英米圏のアンティーク🖋の専門店やまた印度の手作り万年筆の世界にはしかと拡がって居ります。
さう世界はさうして広いのです。
世界はココ🗾のみに限らない。
「まるでケモノのやうに原始的なアイ・ドロッパー(点眼式)」
其のケモノの🖋には原初的なパワーこそが満ちて御座る。
其れは「去勢」された現代の万年筆がついぞ保ち得ぬ「本能」の力のことだ。
其の「本能」の力こそがかうして夜な夜な爆発する。
うーむ、だからそんなJinhao9019の革命パワーに対抗し得るのはむしろ其の「アイ・ドロッパー」ー点眼式ーによる🖋としての本能力のみだらう。
さて大きい万年筆は良いと云うことをこのところ述べて來て居ります。
さうどうも大きい万年筆こそが強力なのです。
常盤|AYA|蒔絵万年筆 | Namiki - ナミキ (pilot-namiki.com)
此れ等が30号金ペン先付きとのことですがおそらくは「SUN STAR FOUNTIN PEN」と同程度のペン先と軸の大きさではないかと思われる。
ですが個人的には無論のこと「SUN STAR FOUNTIN PEN」の方を選びますのですが。
No.50 漆黒|URUSHI|蒔絵万年筆 | Namiki - ナミキ (pilot-namiki.com)
No.50 朱|URUSHI|蒔絵万年筆 | Namiki - ナミキ (pilot-namiki.com)
こちらはかって「パイロット」ブランドの方で販売されて居り幸運にもわたくしは其の初代物の朱軸の方をかって手に入れすでに拾年以上に亘り使って來て居ます。
ですが巨大な筆故年間に弐、参度使うかどうかとなる。
其の初代物の方こそが要するに戦前のPILOTの復刻モデルです。
其の巨大な14金ペン先には戦前の物と同じ刻印が為されて居る。
其の筆記全長は217mmとなる。
また筆記重量が凡そ50gとなる。
此の初代物の方こそが御寶万年筆でBサイズの其の金ペン先には僅かに柔軟性さえもがある。
そんなBサイズではあれ如何にも🗾的な細めのBとなる。
でもって其の14金ペン先が現在では改變され18金となって居る。
18金の方が金品位が高いので良いかとさう思うのは實は素人さんでありマニアックの度が高い人程むしろ14金ペン先を望むものです。
では書いてみませう、早速其の巨大な筆でもって。
御寶
戦前
大川 周明
欲しがりません勝つまでは
欲しがりました勝つまえに
うーん、また物凄い筆記パフォーマンスです。
革命戦士
パーフェクト・デイズ
いやほんたうに此れは凄い。
さうして書き心地の方が凄いのですが實は壱番凄いのが此の万年筆がインク止め式の🖋としてノーメンテナンスにて拾年以上使えて居ることです。
無論のことインク止め式としての部品は現代の素材にて作られますので兎に角精度が出て居り且つ劣化しない訳だ。
と云うことは「インク止め式」の万年筆はむしろ現代に於いてパイロットやナミキにより完成され世界の市場に向け売られ続けて來たのです。
まあなんと凄い御話なんでせう。
ですがこんなものは毛唐の奴等にもデカ過ぎて使い辛いことでせうが流石は大日本帝國製です。ーとは言えほんたうは大日本帝國製には非ずー
まあー兎に角とんでもねえ🖊ですよ。
でもって巨大な軸はエボナイト製で其処に漆が塗られて居る。
しかも其の漆が結構分厚く塗られて居るので多少のことでは剥げたりしない。
ハッキリ申せば「究極の万年筆」とはまさにコレのことでせう。
「理想の萬年筆」の方はあくまで「SUN STAR FOUNTIN PEN」の方ながら現代の万年筆でもってNo.1なのが矢張りと言うべきかコレでせう。
ですのでつい先日大阪で出された「戦前物の大型PILOT」の方に目が釘付けとなりましたのでしたが…。
無論のことカネが有れば買って居ましたのですがね、其のカネさえ有れば。
もう其のカネをパトロンの方が出して下されば良かったのに…。
いやあー、しかしながら、ほんに感動した。
此の🖊はほんに得難き万年筆だ。
当時ー2005年~2010年頃ーかうしてわたくしが壱本を買い求め浦島さんが黑と朱の弐本を求めて居られたが其れが何だか羨ましくもなって來た。
結局万年筆と云う物は本数は大して要らず要は自分に取り凄い物を得られたかどうかなのでせう。
個人的にかってはまた本数の方も有りましたのですが今は「此れは!」とさう思える物とより接近戦を為しつつかうして付き合いつつあるのだと言えやう。
さて最近は大きな萬年筆ばかりを使って居りますが故に此のPILOTの漆モデルの大きさが以前程気にならなくなりつつもある。
よってまさに今こそが此の🖊を使い倒す時なのだらう。
ちなみに以下に以前ネット上で発見した巨大な🖋の画像を貼り付けて置きます。
そんな大きな🖋は例えばヤフオクなどでも常に売られて居りますが此処迄大きな御品は至極珍しいものと思われます。
※参考資料