目覚めよ!

文明批判と美と心の探求と

印度の点眼式万年筆「Airmail」に就いて

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Wality=Airmail点眼式万年筆


此の世には結局何でも有る。

其れが私の持論である。

 

何でも有るが其れは在るのでは無い。

あくまで現象として其れは発現して居る。

 

まさに其のやうな認識をして居るので其のやうに見えるのだ。

 

本質的には無い其れを愛でるのは如何にも馬鹿だがむしろ其れは風流と云うものだ。

まさに其のやうにして古来物の美の系譜は形作られて来た。

 

此の世にはさうして美しいものが沢山ある。

故に其の美しいものに触れる心の余裕をこそ大事にして居たい。

 

逆に申せば社會のことなどに煩わされて居ると其の心の余裕すら持てなくなる。

此の社會、其れも現代社會は弱肉強食の世界で即ち金持ち以外は其の風流が通らぬ世の中なので余程上手いことやらねば只食って寝て出して働いてだけで終わって仕舞い心休まる時が無い。

 

と言うことは美と戯れる心の余裕と時間を持つことこそが實は此の世で最上等の価値の場なのだ。

 

 

だが大抵はエンゲル係数が高くなり過ぎ其処まで優雅に過ごして居る心理的、物理的余裕が我我庶民には無い。

其処は然し考え方ひとつで贅沢な気分に浸ることもまた出来やう筈だ。

 

即ち贅沢品とは何も高級品に限ったことでは無いのだ。

 

尚私は服装には気を遣わず千五百円位のシャツや弐千円位の靴をボロボロになるまで着込み履き古して行く。

要するに其れは消耗品なので別に何でも良いのである。

 

其の代わりに読む本や使う文房具にはしかと凝る。

だから大事にして居るものが世間とは少し違いみんなが余り使わない万年筆にポーンと五万、拾万も支払ったりもする。

 

だが其れは昔のことで今は主に安万年筆に凝りまくって居る。

安万年筆の世界はまさに石の世界と同じで思想だの文學だの何だのと結局はややこしい其の観念的営為から私自身を解き放って呉れる重要な安らぎの場なのだ。

其れもあくまでわたくしにとっての安らぎの場なのだ。

 

第壱万年筆や石を撫でつつ「ああーいいー」だのと常に思い其処に安らぎをさえ与えて貰えるのは此の世でも稀なタイプの人間かと思われ畢竟其れもひとつの世間離れしたディープな趣味の世界のものなのだ。

 

かって私は其の万年筆に於けるディープな追求を事實としてして来た訳で、だから其の部分に関しては謂わば人よりも多くを見且つ経験しても来た訳だ。

 

 

ですが最終的に私はさうして資本主義が生み出す高価な万年筆からは離れまるで民芸品のやうな印度や中國の万年筆に惹かれて行くこととなった。

尤も其れ以前には古典的萬年筆としてのL.E.WatermanやWahl Eversharpを追及して居たのである。

 

だがそんなアンティークの萬年筆を此処数年ばかり使わなくなった。

代わりに良く使って居るのが印度のRangaでありClickであり中國のJinhaoでありまた部品としての90年代の英雄の金ペン先である。

 

勿論プラチナも90年代物までは良いのだが印度物の方がより大きな万年筆となるので其処が気に入り様々な金ペン先に付け替え使って居る訳だ。

 

さうして其の弐、参千円の印度や中國の万年筆はかってと比べ随分と品質が向上した。

即ち安物ともはや一括りには出来ぬ力を其れ等が兼ね備え始めた訳だ。

 

 

逆に高級品が何やらバカバカしく思えることなどもある。

 

MONTBLANC: JOHN ADAMS SIGNATURES FOR FREEDOM LIMITED EDITION 50 FOUNTAIN PEN | eBay

Montblanc Signature's For Freedom John Adams LE Fountain Pen - FACTORY SEALED! | eBay

 

此のJohn Adamsは角軸でもって限定品としては良いのだけれどさてもこんなもんを壱體誰が買うのであらう?

開封品で八百三拾六万七千円とのことです。また中古品でも百六拾七万参千円です。

 

もうかう云うのは明らかにハイパーカーの世界のやうなものでつまりはアホな世界の大金持ちがホイホイと買うであらう白痴的限定品の世界でのものです。

尚わたくしは当初其の限定万年筆のコレクターでした。

其れも拾万、弐拾万、参拾万もする所謂高額限定万年筆を主に扱って居たものだった。

 

もう兎に角アホな金持ち共が世界には満ちておりますのですね。

要するに石油だの麻薬だの不動産王だの何だので普通では得られぬ富を築いて居る金持ちは實際何処にでも居ります。

 

万年筆の世界も壱部ではかうして其のセレブ層をターゲットとした物が売られて居る訳です。

そりゃあ百億も千億も金を持ってれば八百万位の金など屁でも無い訳だ。

 

ですが此れでは如何にも異常な世界です。

まあ其れも高級腕時計の世界程ではまたありませんのですが。

 

 

Wality 71J Eyedropper Big Size Demonstrator Fountain Pen Fine Nib Blue Marble | eBay

で、今回私が買ったのは此のペンです。

こんな送料込みで2500円程のペン。

 

ところが正確には此のペンが届いた訳では無かった。

此れと全く同型のAirmailブランドの不思議な青緑色のペンが届きました。

 

まあソコは如何にも印度らしく適当です。

ですがAirmailブランドの方が實は五百円ばかり高くなるのでむしろ其れで良い訳だ。

 

で、其の八百万のモンブランも2500円のAirmailブランドの不思議な青緑色のペンも結局は同じペンです。

さうしてどうも我には此のAirmailこそが清貧の思考の為のペンであるやうに思えてならない。

 

いや確かに私は今でもモンブランのロレンツォ・デ・メディチを弐本持ち壱本は實用して居ります。

其れぞペンコレクターが認める世界壱の限定万年筆です。

 

 

Montblanc Patron of the Arts Lorenzo De' Medici LE FP - SEALED! LOW & RARE #0272 | eBay

MONTBLANC LORENZO DE MEDICI SEALED FOUNTAIN PEN BNIB!!! | eBay

新品でしかもシールド物でしかもBニブですとかうして今世界相場では117万も致します。

 

ですが其れはあくまで世界相場であり今金の無い日本では多分五十万で売れるかどうか位のものでせう。

なのですが、其の清貧の思考のお供にはむしろ印度や中國のペンの方が向いても居ります。

 

なんとなればモンブランだベンツだと威張るやうなモノは哲學し世と闘う清貧の詩人の持ち物では無いやうにも思われてならぬ。

 

ですから、思考はまさに其の清貧の中でこそ醸成されるものなのだ。

つまり石油成金だの不動産王だのの頭の中身は必然としてアホになる以外無いことだらう。

 

 

では其の2500円のAirmailの具体的な良さとは何でせうか?

 

此のペンは筆記状態で183ミリあり万年筆としては可成に大きい方です。

重心は7対3のところにありつまりは後方重心だ。

 

後方重心のペンは必然としてペンの後ろ側を持つ事となり本来の私の筆記スタイルとはむしろ眞逆ですが筆記に関し器用でどんな風にも書ける私には結局其れも苦にはならない。

其の筆記具に於ける重心の位置と云うことこそがむしろ最も大事である。

 

書き味、書き心地と云った感覚的、感性的に規定される部分よりもむしろ重要な要素です。

 

次に此のペンはアイドロッパー即ち点眼式の万年筆です。

点眼式とは最も原始的なインク供給の方式で首軸を取り去り胴軸へ直接インクをスポイトにて垂らし入れる吸入方式のことだ。

 

つまりはまるで獣のやうに理性的では無い原始的方式なのですが實は其の方がむしろ好ましいことさえもがあるのです。

1.インクフロー(インクの流れ)が概ね良くなること

2.エボナイトフィード(エボナイト製のペン芯)が付いて居る確率が高くなること

3.壱度インクを入れれば長期に亘り書けること

 

即ち筆記性能其れ自體はむしろ点眼式の方が優れて居たりも致します。

但し弱点があり、其れは「携帯には適さない」ペンとなることです。

 

ところが机上限定にて使えばむしろ壱番良いのが其の点眼式です。

 

ところで、

机上限定=前近代的

携帯=近代的

です。

 

例えば万年筆の前段階の筆記具であるDip Penはほぼ完全に前近代的筆記具です。-但しより正確にはDip Penもまた近代的筆記具であり、純粋に前近代的筆記具であるのは所謂羽根ペンのことです。-

と云うことは近代的な筆記具とは「持ち歩き」が出来るやうに進歩して行って居る訳だ。

 

ところが其の「持ち歩き」が出来るやうに進歩して行った結果として筆記上の本格性や書き易さなどの面で本質的にはむしろ不利となって仕舞う訳だ。

 

従って私に限りむしろ其れを逆手に取り机上限定にて使う点眼式の万年筆こそが筆記其のものに対し最良の結果を齎すものだと考える。

しかしながら其のやうな筆記を成就させる為には「携帯すること」=「行動する」ことを止めて仕舞わねばならなんだ訳だ。

 

つまりはさう筆記を「限定」することでこそむしろ最高の結果が得られる訳だ。

 

 

また文明其れ自體もまさにさうしたことなのではあるまいか。

さうしてどっかを限定しないと結局良い処の持ち腐れとなり、つまりはなんでもやり過ぎでまるで収拾がつかなくなりほんたうの物事の良さの部分がまるで見えては来ない。

 

そんな訳で私が印度の万年筆を愛好して居るのはまさに其の点眼式の吸入方式の故なのです。

 

ところが、まさか大金持ち用のモンブランに点眼式を採用することは出来ずおまけにペン芯の方も最近のモンブランは皆プラ芯の筈です。

ですが、あくまで理窟的には点眼式+エボナイト芯の方がより書き易くなるのだと考えられる。

 

但し實際には大金持ち用のモンブランは製作技術や調整力などの面で優れて居り無論のこと書きにくいのでは無くむしろ物凄く書き易いのです。

なんですがJohn Adamsのやうに天冠部にダイヤモンドがキラキラではまるで落ち着いて筆記などは出来ません。

 

 

だからダイヤは筆記具には要りません。

まさか高級腕時計でもあるまいし。

 

なのでダイヤモンドがキラキラなのよりはかうして2500円のAirmailのやうに点眼式でもってしかもエボナイト芯であることこそが詩人の筆記に於いてはより重要なことだ。

其のやうに常に物事の本質を見詰めて行かねばならない。

 

ダイヤモンドが好きなのは其れは其れで良いのだがならば其れは💎として買えば良いことであり何も好んで万年筆に其れをジャリジャリと付け嗚呼其の醜い見栄張りの為に要するに人の眼を気にし自分の優位性を常に見せつけたらうだなんておお何て嫌らしい人間としての性だ。

 

だから詩人はそんな馬鹿万年筆がむしろ壱番嫌いだな。

でも何故か僕は銀製や金製の万年筆はむしろ好きなのだ。

 

 

其のJohn Adamsをもしも大富豪がタダで呉れると言ったとしたらアナタは其れを貰うのですか?

へい、まさに其の大富豪の🐶となり其れを貰います。

 

もう何でもやります。

必ずや何でもやりませうからわたくしに是非其れを恵んで下され。

 

 

いやあー、でも今回は勉強になりました。

要するに印度の万年筆には過去の要素が色濃く出て居り要するに進歩主義のペンでは無い訳だ。

 

さうだ、進んで居ない分良いと云うことが此の世には明らかにある。

例えば腕時計でも高級腕時計の多くが自動巻きとなって居りまさかデジタル時計では無い訳だ。

 

万年筆もまた趣味が昂じると逆方向へと即ち過去へと戻って行く訳だ。

 

 

さて今回のAirmailは早速ペン先を替えて居る。

印度の点眼式の万年筆はペン先の交換もまた實にやり易くすぐに其れが出来る。

 

さてもどんなペン先になりましたか?

即ちアンティークのシェーファー・ライフタイムのデカいペン先を付けてみた。

 

其れもガチガチに硬く万年筆マニアが余り好まないやうな分厚い金ペン先なのだ。

でも最近私は此のペン先こそがむしろ好きなのだ。

 

其のデカいペン先にして果たしてキャップは締められるのですか?

ではよーく画像を見てご覧。

 

ほれ、キャップが妙にデカいだらう?

だからデカいペン先に替えても樂樂キャップが入るのだよ。

 

 

尚万年筆もまた哲學的に考えればこそ見えて来ることが沢山ある。

万年筆の世界では有名な人も多々居られやうがわたくしの如くに万年筆を哲學する人はほとんど居ないやうだ。

 

さうか、すると自分の頭でもって考えることこそが大事なのですね。

理性とは結局其れに尽きた働きなのだ。

其れも文系、理系と云うことでは無しにトコトン考えることこそが大事だ。

 

ちなみに万年筆は点眼式が絶対に良いと云うことでは無くむしろ携帯するならカートリッジ式ー進歩した吸入方式ーこそが壱番だ。

また点眼式は携帯出来ないと云うことでもまた無く例えばスーパーへ買い物へ行く位なら携帯出来ぬものでもまた無い。

 

私の万年筆論はかうして壱面では論理を重視し感性のみには決して流されぬものです。

其れとあくまで私は万年筆を實用品として捉えて居る。

 

なのですが逆に使わず保存して置く万年筆の価値をも大いに認めて居ります。

謂わば使う万年筆は徹底して使い保存する万年筆は徹底して保存すると云うのがまさに私のやり方なのだ。