目覚めよ!

文明批判と美と心の探求と

愛と癒しと魅惑の鉱物ショー


じぶんの鉱物趣味は最近頓に限定されて来て居り、つまりはオパール原石と翡翠原石ばかりに興味があり其ればかりをむしろ探し求めて居ると言っても過言では無ひ。

何故原石なのかと云ふに、其れ即ち根本的に人嫌ひなものだから磨ひただの妙にテカって居るだの不当に高ひだのバカバカしひ程に小さひだの、さうした人為的な搾取構造が兎に角もうイヤでイヤで、即ちさうした形で石売って居る奴等に対してはつまりは蔑んで居り、しかも其れに群がる女共の石の価値に対する無知と自然に対する尊敬の無さ、さうしたものがもうイヤになり加工しなひ石タダ其れのみに美を見詰め其ればかりか其のもの言わず息さへして居らぬ石共に対し秘められたる愛♡の思ひさへをも抱きつつさうして鉱物ショーなどに好んで出掛けて居るのである。


相変らず本年もまた多くの石を見て来しが、其処でまず本など一冊購入して置ひた。

翡翠ってなんだろう 2019」500円

翡翠好きにとり安くて為になる本だ。またカラー写真の方も全く素晴らしひ。

石は地球の子であり元より掘れば幾らでも出て来る。

左様に石などは元より幾らでもあらう。
が、真に美しひ石が實は少なひ。

其れは何故か?

多分観念的に我我が石を分別視して居り其処に価値ヒエラルキー等級を堅固に築ひて仕舞って居るからだ。

だが其処まで考へ込んで居ては逆に石の趣味にて観念性を解放することが出来ぬ。


だから考へなひ。

考へずにタダ石と戯れる。

考へずにつひ高ひ石を買って仕舞った。

其れもまた解放のひとつ。


飲む、打つ、買ふの代わりに行ふ放蕩のひとつよ。


あれ、こんなところにエメラルド原石が。

十五萬。

おや、こんなところにパライバトルマリン原石が。

四十五萬。

流石にパライバの良品は高ひ。


おお、あんなところにエチオピアノーブルオパールが幾つも光り輝き出て居るよ。

其れも良品は五萬前後もする。

ちなみにエチオピアノーブルオパールの原石としての価値は一級だ。

でも安上がりにするならば、ヤフオクでもって千五百円前後で落とせる其のエチオピアノーブルオパールをまずは五個程集める。

其れ等を瓶に入れ水を注ぎ込む。-オパール原石は水中保存が原則ー

其れを夏の強い日差しにしかと翳して見給へ!


ああー、もう、気が狂ひさうに綺麗だ。
嗚呼もうまるでルドンの絵画の如き色彩の乱舞の世界だ。

尚、誇張では無くほんたうにルドンの色彩が其処に花開ひて居たのだ。

ほんたうのほんたうにルドンの色の調和なのだ。


ただし靑は余り出ぬ。
むしろ赤が出るのだ。

オパールでは普通赤の遊色の方が出にくく、靑の遊色の方が出易ひとされて居るのだが全く不思議である。

事実売られて居るものにも赤が強く出て居るやうに見受けられた。



其れではまずは国産ノーブルオパールオパール標本を探さう。

結果良品は無し。

昨年度は宝坂産の良品が確か四十萬程もの値で出て居たのであったが、果たしてアレは一体誰の手に渡ったのであらうか。

嗚呼、アレが欲しひ。

どーしても欲しひがもはや此処には無し。


次に翡翠原石を探してみやう。

結果良品は無し。


何故か?

国石となった途端に大衆根性がよりによってヒスイに群がりおって、其れでもってこれまでヒスイなどどーでも良かった層が我を先にとコレを買ひ求める。

するとヤフオクなどでも糸魚川ヒスイを楽には落札出来なくなった。

兎に角関係無ひやうなオジサン達がヒスイ売り場に何故か群がっておる。

其は我我ヒスイマニアにとり非常にマズい状態であらう。


おっと、コレなどは素晴らしひものではなひか!

なーんだ、非売品であった。



何やら外国人も多く店を出して居るな。

どうも店番に印度人みたいなのや、独逸人の女なども居るぞ。

其の独逸人の女に話しかけられたぞ。

コレがエメラルドです。

標本の裏に貼られた値段を見ると矢張り十五萬だ。


中国人らしき店番さへ居たぞ。

コレが鶏冠石です。五満。

まさか?

其れはまるでペルー産のロードクロサイトの如くに見事に赤きしかも大きな結晶を成して居た!

そんなものは初めて見、其のことはまた多くの石の愛好家もさう言って居たさうである。

無論のこと中国でも掘れば石は幾らでも出て来る。


今回はしつこく三時間も会場をグルグル回って居た。

何せ人嫌ひ故普段は一時間で退散するのであるが余りに石への思ひが強く俄かには立ち去り難し。

もう、人間などはもうどうでも良ひので兎に角石だけを見詰めておる。



うわー、出たな。
つひに出た。

かのパイロクスマンガンがつひに出た。

十年振り位かな。

こんな良品が出たのは。


ちなみにパイロクスマンガン鉱や棚山産のノーブルオパール標本はもはや終わって居る、と申しても良ひ程の状況だ。

もはや良ひものは全て売り尽くされて居る。

どーでも良ひやうなものが一萬、二萬で売られたりもして居るがもはや誰も手など出さぬ。


が、地元のコレクターはいつか良品を放出するものだ。

事実其れも瀬戸市のコレクターさんよりの出物だった。

其れも夫婦でもって今回売って居られる。


真面目で人の好さそうな奥さんが、かって凄ひパイロクスマンガン鉱標本を家に寄るコレクターに二束三文でもって譲って仕舞った旦那のことを嘆ひて居られた。

まあ、わたくしは今はこれだけですので。何せ石はピンからキリまであります。然しもう還暦です。

だから自ら限定して石趣味を愉しむ他は無し。

つまりはパイロクスマンガン鉱と翡翠だけです。


其処へ如何にも真面目で人の好さそうな旦那が売り場に戻った。

ほーい、採った奴、其れも穴に潜って獲った奴。25年も前に割った奴。

何とかまけて下され。

ハイ、コレ。

いつの間にか電卓に数字が打ち込まれておる。


正直皆さんー愛好家の方々がー安ひと言ってました。

コレなら片手、は行くでせう。

でもさらに今値引きしました。


ハイ、買った。


そんな訳で生涯二番目となるパイロクスマンガン鉱の良品を手に入れた。



其のエチオピアノーブルオパールの良品を何度も繰り返し見にいく。

が、老眼が進み何せ見にくひのでメガネを上に上げレンズの下の方で良く見る。

嗚呼、赤ひ。

でもコレも赤ひ。

エチオピアノーブルオパールなんぞはまだまだこれから掘れば幾らでも出て来る。

然しかの田口鉱山産パイロクスマンガン鉱はもはや出ては来ぬ。

後はコレクターによる放出品を待つのみ。


が、結局わたくしも全部放出していくのやもしれぬ。

次第に欲が無くなっていくので突然もう要らなひ、と云ふことになる可能性も高ひ。

が、まだ欲はあるので喜び勇んで自転車で家へ帰ったのだった。


家へ帰り標本を見比べるとかってTENKAWAさんで購ったパイロクスマンガン鉱の方が結晶の質は上だ。

ところが今回のものは兎に角石がデカく結晶も多く付ひて御座る。

だから二番目の標本なのだ。


其ればかりか實はさらに二点を購入して居る。

一点は北海道産のイエローオパール(ファイアーオパール)。

北海道産のイエローオパールは多分国産のオパールとしては最も美しひのではなひか。

コレも一年程前から好んで集めて居るものである。

値は二千円也。


いまひとつは鉱物同好会のブースにて変な物を買った。

即ち灰クロム柘榴石の塊状標本である。

自形結晶になって居らず兎に角ベタッと緑が拡がって居るが母岩が黒ひので黒と緑の色の混じり具合が面白ひ。

のみならず兎に角石がデカい。

石がデカいと老眼または観念的欲望の減退、全体的パワーの減少などにはまさに良く効くやうで極めて分かり易く存在感のある石なのさ。

値は三千円。

まけろ、と言ったがまけては呉れなんだ。


尚鉱物同好会では鉱物の鑑別の方も無料で引き受けて呉れる。

ところが鑑別の石を持っていくのをつひ忘れて仕舞った。

實は怪しひ石に囲まれつつ今を生きておる。

一番怪しひのはヤフオクでもって関西から取り寄せたミャンマー翡翠のデカい原石だ。


コレは實に怪しひ。

第一関西から出品とのことだがモノが中国経由で来たらしく何と到着に一カ月もかかった。


其れに写真とも大分違ふ。

勿論写真程良くは無ひ。

なんだけれども、實は悪くも無ひ。

そこそこに緑は出て居るし昔騙されて六萬で落としたインチキミャンマーヒスイよりはなんぼかまともだと云ふことよ。


是非コレの皮を全部ムキたひところだ。
ミャンマーヒスイには皮がありコレを剥かぬと全貌が明らかにはならぬものだー


次にかってヤフオクでもって買ったヒスイっぽいがもしやヒスイではないのでは?と思われる三個体。

早速鉱物同好会の兄ちゃんに尋ねてみた。


ヒスイの鑑別は難しひでせう?

ーさうですねえ、結晶の形さへ確認出来れば左程のものでもありません。

結晶の形だけでは判別出来なひ個体もあるのでは?

ー確かに非常に細かな結晶でもって質の良いものはさうかもしれません。


兎に角翡翠は難しひ石である。

尚、ヒスイはそんなに固くは無ひが強靭な岩石だ。

対してダイヤモンドの結晶は固ひが脆ひ。


さうしてもってヒスイは其の表面に結晶が煌めき極めて美しひ。

其ればかりか手触りが良くまるで柔肌を触るが如き感触がするのだ。

ただしヒスイはまた値段的にもそして質的にもピンキリである。


さても其の価値ヒエラルキー等級とは一体何処から生じて来る価値なのだらうか?


最高の翡翠、其れもまだ糸魚川の方の山には幾らでも眠って居らう。

ただし其れは掘って無ひ。

そも採取禁止なのであるから。


だが掘って良品としての原石が出ればヒスイは如何にも日本の国石として世界中に高く売り捌けられることだららう。

コノ一度掘ってみたひ、と云ふ願望は矢張りと云ふべきかイケナイ願望なのであらうな。

だがどうしても見てみたいのである。


緑や青に染まった最上質の糸魚川ヒスイを机上に置いていつも鑑賞して居たひ。

お勉強の合間に、また思索の最中にそんなパーフェクトなしかもデカい緑や青の翡翠ーオンファス輝石が混じった形でのーをしかと此の手に握りしめたり、或はゴロゴロと転がしてみたり、また時に舐めてみたりもしたひ。

ま、其れも山にはまた海の方へ流れ出た個体にも最高級のものが必ずやある筈。

よって重装備でもって潜ってヒイコラ言ひつつ採取する方法もまたあり。


尤もわたくしはもうそんな体力がないゆえ新潟や富山辺りでのヒスイの店をくまなく回り現金採集してみたいところながらそれでも結構生活に追われて居て其れもままならぬ。

其れにヤフオクでの採集にもどうも限度がありなかなか思ったやうには良品は集まらぬ。



所有などしちゃイカン!

すぐさますべてを捨てよ!

ハイ、たった今捨てました。


いつかはさうなることかと思われます。

でもそれまでは翡翠行脚の旅は続くのです。

翡翠行脚=煩悩行脚であるにせよ、わたくしは兎に角美など決して捨て去ることなど出来やしなひ。

つまるところは男六十歳、独身でもって美とのみ結婚しておるのじゃ。

だから石も好きなのじゃ。

ああーもう舐めたい程に愛おしひ。

石ちゃん達は決まってわたくしの精神的苦痛を和らげ其の純粋なる色でもってして疲弊せしわたくしの心を癒すのじゃ。